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 ドイツ現代文化研究会への招待
 本研究会は19986月に発足した。振り返れば早いもので6年近くになる。ゲルマニスト同士が気軽に意見交換できる場が名古屋地区では少ないという気持ちを持っており、当時たまたまベルリンから客員研究員として本務校に招いたMarkus Hallensleben君が来たので、何かフォーラムのようなものを作ろうということになった。愛知県立芸術大学の関口裕昭君からも研究会の希望を聞いていたので、まずは内輪のささやかな集いを始めたわけである。こうして第一回はMarkus君のElse Lasker-Schüler論、第二回は関口君のCelan論、第三回は私がオーストリア言語実験派作家たちについて発表を行った。当時はドイツ文学ゼミナールと勝手に名づけていた。
  その後、客員教授として招いたドイツやオーストリアの研究者や作家たち、学内共同研究プロジェクトで招いた国内研究者たち、オーストリア現代文学ゼミナールで来日した作家たちなどを中心として講演会や討論会を開催しながら、そこに輪読会や研究発表を交えて徐々に現在の形(毎月1回開催)になっていった。

幸い新学部を作ったときに認められた大学の客員教授招聘制度を利用して、ハイデルベルク大学文化人類学教授のKoeppingさん、ベルガモ大学教授のPogatschniggさん、作家・批評家のLeopold FedermairさんやMartin Kubaczekさん、あるいはElisabeth Reichartさんや Peter Rosaiさん、Sabine Schollさんといったオーストリア作家や、コンスタンツ大学の心理学者Wolfgang Friedlmeierさん、客員研究員のイギリス人ゲルマストLaura Ovendenさんなど、多士済々の方々が本学に滞在し、さまざまの講演会や朗読会を催した。また、オーストリア現代文学ゼミナールに招待されたBodo HellさんやFerdinand Schmatz さん、Liesl Ujvary さんなどの詩人朗読・討論会を開くこともあったし、ときにはKittler”Aufschreibesysteme”を共通テクストとして数回輪読会を行ったり、Bachmannの 詩集や散文を共通テクストに討論したりすることもあった。講演会案内には、扱うテーマやテクストをあらかじめ周知させて参加者の皆さんにも準備してもらっ た。学内共同研究との共催では、ユダヤ文化論について都立大学の鈴木隆雄さんや金沢大学の野村真理さん、京都産業大学の生田真人さんに講演していただいた こともある。最近では、はやり学内共同研究「越境の文学」の招聘で、沼野充義さん、デビット・ゾペティさん、多和田葉子さん、今福龍太さんなどの講演討論 会を催すことができた。こうした講演会の間を縫って、若いゲルマストたちの研究発表を聞く機会もありよい刺激になっている。扱うテーマもドイツ文学に限ら ず、講演者の専門によって現代文化・社会のアクチュアルな問題にまで広がりつつある。最近の成果として、昨年12月に大学の特別研究奨励費を使って行った国際シンポジウム「現代文学における日本像」(16名の発表者により3日間開催)は、これまでの客員教授や作家たちとの人脈を生かした企画となった。

 こうして回顧してみると、なかなか活発にやってきたように思われるかもしれないが、実際のところ参加者数はあまり多くない。メーリングリストには東海地区のゲルマニストを中心に一応38名 が載っているが、いつも集まるのは数名から多くて十数名くらいである。常連メンバーの関口君や名古屋大学の山口庸子さん、翻訳家の鈴木仁子さんであり、そ れ以外は常時参加できないメンバーが多い。若いゲルマストたちや大学院生たちも入れ代わり立ち代わりの参加で固定していない。しかし、もともと軽い気持ち で始めたものだし、研究会よりもその後の懇親会で歓談するのが楽しみで続けているようなものである。ただ、遠くから来られた研究者や作家の講演会などで、 あまりにも参加者が少なく心苦しいことがあり、この点は世話役として何とか改善したい。また財政的な理由で、作家や研究者を招聘する余裕がなくなりつつあ るのが非常に残念である。このように気さくな研究会ではあるが、将来は何か形になるよう、統一テーマで共同出版したり、輪読会の成果として作品や論文集の 翻訳を共同で出したりするような企画を夢見ているところである。

なお、本研究会のホームページで、2000年度以降の活動状況を載せている。案内メールを貼り付けただけの見にくい体裁になっている点はご容赦いただきたい。また、この機会にご関心のある方はぜひ参加していただければ幸いである。飛び入り大歓迎。(2004年4月)

問い合わせ先 : 土屋勝彦
URL : http://doitsubunka.zouri.jp/